FIREから始める「晴耕雨読」の日々

~AIとの問答による「学び」を綴りました~

第2部:資産家の「偽装貧困」を許すな――給付付き税額控除が「盗人に追い銭」にならないために

【維新の『国保逃れ』は、氷山の一角に過ぎない】

 先日、日本維新の会の議員らが一般社団法人を介して社会保険料を激減させていた問題が火を噴いた。議員報酬という多額の所得がありながら、理事を務める法人の「月額数万円の報酬」をベースに社保に加入し、本来払うべき国民健康保険料を回避する。

 「身を切る改革」の裏で行われていた「身を隠すハック」。だが、元公務員の視点から言えば、あれは何も特別な手法ではない。マイクロ法人や資産管理法人を駆使した「実態を伴わない所得の分離」は、富裕層の間では半ば公然の「たしなみ」ですらある。今の世の中、美醜を尊ぶ価値観は死に絶え、制度のバグを突く「ハック」こそが賢い生き方だと称賛されているかのようだ。

【聖域を構成する『三種の神器』】

 私が第1部で書いた通り、個人投資家が特定口座で1円単位の税と社保を毟り取られる横で、法人という鎧を着た人々は「現物給付」という名の聖域に守られている。

  1. 社宅(マンション)という名の不労所得:数億円の資産があっても、法人名義で借りれば本人負担はわずかな「賃料相当額」のみ。残りは会社の経費。

  2. 社用車という名のプライベート・モビリティ:1,500万円の高級車を、法人の経費で加速償却。維持費もすべて経費。

  3.  家族の従業員化と「役員報酬4.8万円」の錬金術:ここが最も巧妙、かつ「正直者が馬鹿を見る」仕組みの核心だ。彼らは利益を個人として受け取らず、あえて法人にプールする。個人への支払いは、戦略的に**「月額4.8万円」**程度の役員報酬に抑えるのだ。さらに実態のない家族を従業員にして給与を分散し、世帯全体の社保を最低ランクに抑え込むことも公然と行われている。 

    • なぜ「4.8万円」なのか: この金額設定なら、個人の所得税・住民税は基礎控除等でほぼゼロになる。一方で、社会保険(協会けんぽ等)には「報酬がある」という実績だけで、最も低い等級で加入できてしまう。

    • 税率の格差を突く: 個人で数千万の利益を出せば所得税・住民税で最大55%を毟り取られるが、法人なら中小企業の軽減税率を活用して約23〜34%程度に抑えられる。この「税率の差」を利用して法人に金を残し、個人は「低所得者の皮」を被って社会保険料を最低額に抑え込む。

     節税の工夫自体は経営努力の範疇かもしれない。だが、数億円の資産を運用し、法人の箱を使って豪華な生活を送りながら、その実態を隠して「月4.8万円の低所得者」として公助の枠組みに最小限の負担で乗り続ける。この「一定の閾(しきい)を超えた脱法的ハック」を放置したまま、特定口座の個人から無慈悲に徴収を続ける制度は、もはや道徳的に破綻していると言わざるを得ない。

【行政の不作為:『通達一発』で防げるハック】

 こうしたハックを潰すのは難しいことではない。厚労大臣がお得意の行政指導で「依命通達」を発出すれば済む話だ。

 例えば、**「役員報酬が当該地域の最低賃金×標準労働時間(170時間程度)を下回る場合、原則として社会保険の被保険者資格を認めない」**と再定義すればいい。実態のない「月額4.8万円の役員」や「お飾りの理事」を入り口で弾けば、制度のバグは一瞬で修正される。

【過去の事例:やる気になれば行政は動く】

 かつて、社会保険の未加入問題においても、同じような「不作為」があった。保険料を逃れるために従業員を短時間労働扱いにしていた中小企業を、長年行政は黙認してきた。

 しかし、「消えた年金問題」で世論が爆発すると、厚労省は一気に動いた。**「国税庁の源泉徴収データと年金機構のデータを突合させる」**という運用を決定し、逃げ隠れする事業所への強制調査・強制加入を断行したのだ。

 今のマイクロ法人ハックも、全く同じ構図だ。国税庁のデータを見れば、その法人の資産背景も、役員の個人所得も丸見えである。突合さえすれば、維新の議員のような「議員報酬1,500万円、社保上の報酬5万円」という異常な歪みは即座に摘発できる。

【結び:正直者が馬鹿を見ない社会へ】

 与野党が掲げる「給付付き税額控除」。所得を正確に把握して弱者に配るという理想は美しい。だが、法人の「箱」の中に所得を隠し、個人としては「低所得者」を装う人々を放置したまま導入すればどうなるか?

 答えは明白だ。「正直に納税をした個人」が財源を負担し、「法人スキームを駆使する偽装貧困層」が給付金を受け取る。 これを「盗人に追い銭」と言わずして何と言うのか。

 抜け穴は分かっている。これら聖域を丁寧に潰せば、徴収漏れは数兆円規模になり、全体の税率を下げることだって可能だろう。マイナンバーで国民の小銭を追いかける前に、ペン先一つでこの「不公平な聖域」を潰して欲しい。正直者が馬鹿を見る社会を見るのは、とても悲しくつらいことだ。

 あなたが毎月の給与明細を見て『また保険料が上がった』と溜息をついているその瞬間、隣の高級マンションに住む法人のオーナーは、あなたの数分の一の保険料で同じ、あるいはそれ以上の行政サービスを享受しているかもしれない。これはSFの話ではなく、この国の制度の穴が作り出した残酷な現実だ。

 

phantom-x.hatenablog.com