FIREから始める「晴耕雨読」の日々

~AIとの問答による「学び」を綴りました~

徴収は「個人」、給付は「世帯」――政府が使い分ける二枚舌の欺瞞を排せ

2026年4月28日、財務省が財政制度等審議会で示した「医療保険の個人単位化」への提言。被扶養者という「昭和の家族モデル」に基づく優遇を廃し、加入者一人ひとりが応分の負担を負うべきとするその主張は、一見すると公平性の追求に見える。

しかし、その論理構成を一歩踏み込んで分析すれば、そこにあるのは「公正」への意志ではなく、財政事情に合わせた極めて不誠実な「単位のつまみ食い」であることに気づく。

1. 取る時と出す時で変わる「国家の物差し」

現在の日本政府は、自分たちの財布にとって最も都合が良いように「個人」と「世帯」という二つの単位を使い分けている。

まず、「徴収(取る時)」においては「個人」が強調される。 「誰かの扶養に入っているから保険料は免除」という特権を、自立した個人の原則に反するとして剥ぎ取ろうとする。これは、徴収の網の目を最大化し、取り漏らしをなくすためのロジックだ。

ところが、いざ「給付や減免(出す時)」になると、国家は急に「世帯」という単位を持ち出す。 生活困窮者への支援や各種給付金の判定において、「個人」がいかに苦しくとも「世帯合算で一定の収入があるなら、家族で助け合え」と公助を拒む。かつての明治・昭和的な家族の連帯を、給付を絞るための便利な「盾」として再利用しているのだ。

2. 「徴収の個人化」と無自覚な既得権益の終焉

今回の提言を「サラリーマンへの増税だ」と憤る層は多い。しかし、ここで我々は一度、「第1号被保険者(自営業者など)」との比較を直視しなければならない。

国民健康保険(第1号)の世界では、世帯に家族がいればその人数分だけ保険料が加算されるのが「当たり前」のルールだ。一方で、社会保険(第2号)の被扶養者制度や、専業主婦等の保険料を免除する「年金の第3号被保険者制度」は、家族が何人いようと、あるいは配偶者がどれほど手厚い年金保障を受けようと、世帯としての保険料負担は変わらない。

これまでサラリーマン世帯が享受してきた「家族分の医療・年金保険料無料」という仕組みは、第1号被保険者から見れば、喉から手が出るほど羨ましい巨大な既得権益に他ならない。この「透明な特権」にどっぷりと浸かり、それを当然の権利だと錯覚してきた層に対し、国は今ようやく「個人として払え」と迫っている。

問題は、国がこの「個人単位化」を、公正な社会への移行ではなく、単なる「取りやすい場所からの徴収最大化」の道具にしようとしている点にある。

3. ブラックボックス化した特権の解体

この欺瞞を解消するために必要なのは、中途半端なつまみ食いではなく、社会のあらゆる仕組みにおける徹底した「個人単位化」である。住宅ローン控除、配偶者控除、給与所得控除――これらは特定の行動や属性を持つ者に与えられた「見えない補助金」だ。

これらを全廃し、課税ベースを一度「更地」に戻すべきだ。 控除という不透明な減税をやめ、徴収は一人残らず、算出された税率に従って行う。その上で、国として支援すべき対象に対しては、透明な基準に基づき「直接給付」という一本の道で報いる。

例えば、月額30万円以上に達するゼロ歳児の保育コスト(現物給付)を「当然の権利」として享受しながら、数百円の支援金徴収に抗議するような歪みを、現金給付への一本化によって可視化するのだ。

4. 企業の「昭和モデル」という聖域

国家の欺瞞は、企業の賃金体系にも色濃く影を落としている。依然として居座り続ける家族手当や扶養手当。私生活の形によって賃金に差をつけ、単身者に業務の負荷を押し付ける構造は、もはや福利厚生ではなく「属性による差別」だ。

企業は個人の台所事情への介入を断ち切り、これら諸手当をすべて本給へと統合すべきである。単身者が家族持ちの穴を埋めることを「当然」とする昭和の甘えを断ち切ることこそが、真の「同一労働・同一賃金」への第一歩となる。

5. 令和の「三方一両損」へ

我々は今、全員が自分の「控除」や「手当」という一両を死守しようとして、国家という船を沈没させようとする「囚人のジレンマ」の中にいる。インフレと円安という「静かな収奪」が個人の資産を脅かす今、もはや利払い費すら含めた財政収支を直視せず、将来世代にツケを回す余裕は一分も残されていない。

必要なのは、江戸の知恵に学ぶ「三方一両損」の精神だ。

左(現役世代の控除)、右(自営・企業の既得権益)、そして上(政府のバラマキ権限)。この全員が特権を捨て、一両ずつ損を受け入れることで、はじめて全体最適という公正な社会が生まれる。

自分の利害だけに固執して他者にツケを回すことを「潔し」としない。そんな自立した個人の意志こそが、利息という波に呑まれゆく日本を救う唯一の、そして最後の道となるはずだ。